需要が高まる「介護の日本語」

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少子化による労働者不足の影響を受け、特に介護分野で外国人労働者の受け入れが加速しています。また、介護に従事する外国人の増加にともない、「介護の日本語」を指導できる日本語教師の需要が年々高まっています。

さて今回は、需要が高まる「介護の日本語」について、受け入れの仕組みや外国人の増加の状況、日本語教師の需要などについて解説します。

1.「介護の日本語」を教える日本語教師はどうして需要が増加しているのか

少子高齢化が進む中、介護分野(医療・福祉)は特に人材不足のため、介護職に従事する外国人労働者の需要が年々高まっています。人材不足を補うために日本政府は様々な政策を打ち出し、外国人介護人材の受け入れを推進しています。そのため、実際に介護分野で働く外国人、介護福祉士の資格取得を目指す外国人などが増加しており、「介護の日本語」を教えることができる日本語教師の需要も増えているのです。

特に地方では日本語学校や日本語教師が少なく、日本語指導員が不足しています。そのため遠隔地でも授業ができるオンラインによる教育が広まっています。

2.外国人介護人材の受け入れの仕組みと増加状況は?

介護に携わる外国人の受け入れの仕組みは4つあります。

  • EPA(経済連携協定)介護福祉士候補者(2006年~)
  • 在留資格「介護」(2017年9月~)外国人留学生(大学、専門学校等に在籍)
  • 技能実習「介護」(2017年11月~)
  • 特定技能「介護」(2019年4月~)

EPAは3か国が対象ですが、新しい在留資格の創設により様々な国から人材が受け入れられるようになりました。その増加数は目を見張るものがあります。介護や医療の現場にいる方は、肌で感じているのではないでしょうか。


EPA(経済連携協定)介護福祉士候補者

EPA(経済連携協定)の強化を目的にした制度で、現在、受け入れを実施している国はインドネシア、フィリピン、ベトナムの3か国です。介護福祉士候補者として入国したのち、介護施設や病院で就労・研修を行いながら、最終的には国家資格取得を目指します。それぞれの国で日本語研修を受け、インドネシア(N4以上)、フィリピン(N5以上)、ベトナム(N3以上)の日本語能力をもって訪日し、訪日後も国家資格取得に向けて日本語研修を行います。 受け入れ数は、制度開始の2006年より年々増加し、2019年度までに 968 箇所の施設等で累計 5,063 人の受け入れとなっています。近年は1年に700名程度の受け入れが続いています。

  • EPA介護福祉士候補者は、これまでに5000名が受け入れ、年間700名程度増加中。

在留資格「介護」

2017年9月より開設された在留資格で、専門学校などの介護福祉士養成校で介護福祉士資格を取得した外国人留学生を対象としています。入学時の日本語レベルとしては、2年コースでN2程度、3年コースでN3程度が求められます。
介護福祉士養成校の外国人入学者は、2017年は591人でしたが2019年には2,037人と急増、その後コロナ禍の影響はありますが、2000人程度の入学者数が続いています。

  • 介護福祉士養成校の外国人入学者は、毎年2000名程度で継続中。

技能実習「介護」

2017年11月より追加された介護職種の技能実習制度です。「技能実習生」として入国後、最大5年間の実習を行います。実習期間終了後は、帰国し日本で獲得した技能を活用するというものです。1年目(入国時)は「N4」程度、2年目は「N3」程度が要件とされているため、介護分野の技能実習生は他の技能実習生よりも高い日本語能力が求められているといえます。
「介護」の技能実習計画の申請件数は、2018年12月末で1,516件(認定946件)であったのが、2020年1月末で10,225件(認定8,652件)と飛躍的に増加しています。

  • 「介護」の技能実習計画の申請件数は、2018 年から7倍に増加しています。

特定技能「介護」

2019年4月に新設された「特定技能」という在留資格です。特定技能「介護」はJLPT N4または国際交流基金日本語基礎テストに加えて、介護日本語評価試験・介護技能評価試験に合格することが条件となっています。介護施設等で5年間の就労が認められており、他の在留資格同様に、国家試験に合格すると在留資格「介護」に切り替えることができます。
政府の特定技能「介護」の受け入れ目標は5年間で最大60,000人です。令和4年6月末現在でまだ約10,000人にとどまっており、今後最大で50,000人の増加が見込まれています。

  • 政府の特定技能「介護」の受け入れは今後最大で50,000人の増加の見込み。

参考:厚生労働省 外国人介護職員の受入れと活躍支援に関するガイドブック
https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/000678250.pdf

3.介護の日本語を教えられる場所は?

では、このような受入れの仕組みを利用し介護の現場で働く外国人に対して、日本語教師として具体的にどのような仕事があるのでしょうか?

主に下記で日本語指導が行われています。

  • 訪日前の海外現地での日本語研修 ※
  • 訪日後の日本での日本語研修
  • 介護福祉士養成校や介護施設・病院等での日本語指導
  • オンラインレッスンでの「介護の日本語」や試験対策指導
  • 福祉関連の専門学校や大学で学んでいる外国人留学生に対しての指導
  • 介護外国人材紹介・派遣業における日本語指導

※国際交流基金では、訪日前日本語研修の日本語教師募集を行なっています
https://www.jpf.go.jp/j/project/japanese/education/training/epa/index.html

インターネットで「介護 日本語教師募集」や「介護の日本語 求人」を検索してみると、日本語教育機関の募集よりも協同組合、社団法人、株式会社などが多く上がってきます。
日本語教師有資格者であれば介護の知識・経験は求められないことが多く、介護分野での就労実績がない方でもチャレンジできます。

今後、外国人受け入れ数の増加に伴い、募集数の増加が予測されます。また、コロナが落ち着けば、国内だけではなく海外の福祉関連教育機関からの募集も増えていくでしょう。

4.日本語教師として「介護の日本語」を教えるスキルをつけるために

すでに「介護施設のスタッフとして働いている方」、また「介護職志望の外国人をサポートしたい方」は、外国人に日本語を教える上で重要な考え方や基本的な技術を学ぶことにより、指導力が格段にアップするでしょう。

すでに「日本語教育能力検定を合格している」「日本語教師養成講座に通ったことがある」という方は、「介護に特化した日本語を教える」スキルを身につけることで、日本語教師としての活躍の場が広がります。

「介護の経験がある+外国人に日本語を教えることにも興味がある」という方、あるいは、「日本語教師として活躍+介護分野のスキルも増やしたい」という方、ぜひ「介護の日本語」をご自分のスキルにしてみてはいかがでしょうか。

最後に

ルネサンス日本語学院では2月17日(金)より1.5か月間の「介護の日本語」教え方講座を開催いたします。
実践的なオンライン形態の授業で「介護の日本語」教え方を習得する講座です。