日本語教師の国家資格「登録日本語教員」とは! 第1回目

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皆様は「日本語教師の国家資格化」というニュースを聞いたことがありますか?

2020年頃から国家資格化について議論が進められてきましたが、いよいよ2023 年の4月以降の国会で審議が始まりそうです! 制度の枠組みも見えてきており、今年はいよいよ国家資格としての具体的な内容が示されていくのではないでしょうか。

すでに日本語教師として働いている方や、これから資格取得を目指す方は、「いつから国家資格になるのか?」「どんな制度なのか?」「現在保持している資格はどうなるのか?」など、ご心配されている方が多いと思います。

そこで、今回のトピックでは、「登録日本教員」として、現時点で決まっていること、また審議中のことなど、資格化を巡る情報についてお伝えしていきます。

新しい国家資格の名称は?

当初、新しい資格の仮名称は「公認日本語教師」として進んでいましたが、現在は「登録日本語教員」という名称に変更され、制度内容の検討が続けられています。

制度化の背景

背景としては、在留外国人の増加に対して、日本語教師の質と量を確保しなければならないという国の認識があります。現在の日本語教師資格は公的な制度ではないため、教員の質にもばらつきがみられます。このような現状を踏まえ、日本語教育機関および日本語教師の質の維持向上を目的として、「登録日本語教員」と「日本語教育機関認定」の制度が設けられることになりました。

  • 「登録日本語教員」は、日本語教師の需要増加を見越して、教師に公的な基準を設けたいという政府の意向を反映した制度
  • 「日本語教育機関認定」制度(後述)と一緒に制度化される

現在の日本語教師になるルートは?

ご存じの方も多いかもしれませんが、現在の資格や日本語教師になるルートを知らない方のために、現在のルートを解説します。

ルートは、主に以下の3つです。

  1. ① 大学または大学院で日本語教育を専攻する
  2. ② 420時間の日本語教師養成講座を修了する
  3. ③ 日本語教育能力検定試験に合格する

①は日本語教員養成課程を設置する大学や大学院で学ぶルートです。
②は文化庁届出を受理された民間の420時間以上の日本語教師養成講座を修了するルートです。
③は10月に実施される社会的に認知度が高い日本語教育能力検定試験に合格するルートです。

②は学歴要件があり、学士(4年制大学卒)の資格がある方が対象です。そのため、学士をお持ちでない方は、通信大学で学ぶか、③の検定試験合格を目指しましょう。
③の検定試験の合格率は25%~30%であるため独学ではハードルが高い試験です。ただ、ここ数年は合格率が上昇傾向にあります。

②と③を比較すると、

  • ②は講座を修了すれば確実に資格が手に入ることがメリットで、修了までに半年~1年以上と長くかかること、費用が50、60万円相当と高いことがデメリット
  • ③の検定試験は対策にかかる費用が割安であることと、社会的認知度が高く就職時に有利であることがメリットで、合否で左右されることがデメリット

いつから国家資格に変わる?

2021年1月当初、文化庁から発表されたロードマップでは2024年(令和6年)の全面施行が目標とされていましたが、2022年に提出予定であった法案は2023年4月以降に提出される予定となっています。
現時点で1年近く遅れており、関連機関との調整も予想よりも時間がかかっていることから、延長の可能性も高く、スケジュールに関しては現時点で未定と言わざるを得ません。

・文化庁 資格制度創設に向けてのロードマップ(案)2021年1月
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kondankaito/nihongo_kyoin/pdf/92792101_05.pdf

  • 全面施行は最短で2024年(令和6年)の予定であったが、現時点で未定

「登録日本語教員」は今後どこまで適用されるのか?

新しい国家資格である「登録日本語教員」は、移行後はどの範囲まで適用されるのでしょうか?

まず、現在も日本語教師資格と認識されている、先にご説明した日本語教師になるルート①②③の適用範囲についてです。
皆さんがご存じのいわゆる日本語学校は、正確には法務省告示校(留学生のためにビザを発給する日本語学校)と呼ばれています。教師条件は以下の通りです。

  1. 1.大学または大学院で日本語教育に関する教育課程を履修し、所定の単位を修得し卒業した者
  2. 2.学士の学位を持ち、日本語教育に関する適当な研修を420単位時間以上受講し修了した者
  3. 3.日本語教育能力検定に合格した者

つまり、この告示校で働くためには、先にご説明した日本語教師になるルートの①②③のうち、どれか一つ を満たしていなければなりません。

告示校以外で働く場合は、実はこの①②③は適用されません。例えば、日本語スクールや語学学校、企業、オンライン講師、個人などの形態、その他海外の多くの機関で働く場合には、告示校と同じような縛りはありません。
しかし、実際の求人情報を見てみると、420時間講座修了や検定合格を条件に挙げているケースは多くみられ、実質的に日本語教師の資格として①②③のどれかが必要になっているのが現状です。

次に、新たな国家資格である「登録日本語教員」の適用範囲についてです。

文化庁の有識者会議でまとめている「日本語教育の質の維持向上の仕組みについて(報告)」の素案では「認定日本語教育機関で教える日本語教師は全員、登録日本語教員の資格が必要」となっています。「認定日本語教育機関」とは、登録日本語教員と合わせて検討されている新制度です。
令和4年12月現在、留学生対象の日本語学校の日本語教師に対して国家資格の義務付けを盛り込んだ報告書がまとめられておりますが、将来的には留学生を対象とした日本語教育機関外にも適用されていく方向で検討が進んでいます。

  • 留学生を対象とした「認定日本語教育機関」で働くためには必須
  • 長期的には、「就労」「生活」の分野の日本語教育機関にも適応される方向

いま日本語教師を目指す場合、現在のルートで資格を取得するべきか ?

検討が続く「登録日本語教員」ですが、これから日本語教師を目指す方にとって現行のルートである

  1. ①大学または大学院で日本語教育を専攻する
  2. ②420時間の日本語教師養成講座を修了する
  3. ③日本語教育能力検定試験に合格する

で資格取得を目指すべきなのでしょうか。

新制度の施行は早くても2024年以降と言われておりますが、いまだ移行時期は不透明です。試験の内容や難易度もまだ具体化されていません。このような状況を考えますと、このまま現行のルートで資格をとり、就職して実務経験を積むことがお勧めの道と言えるでしょう。

現職の教師に対し、経過措置制度が検討されています。検定試験の合格者は国家資格を取得する際に必要な試験が免除されるというものですが、細部についてはまだ議論が続いており、「現行の資格を取得していれば、新資格が無条件で取得できる」ということではありませんので、その点は注意が必要です。

  • 2023年1月であれば、 現行のルートで資格をとり、就職して実務経験を積むことがお勧めの道

おわりに

また、次回以降で、新しい資格制度の試験や実習、経過措置について詳しく取り上げていきます。

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