登録日本語教員とは?資格取得の流れや条件も紹介

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「登録日本語教員とは?」
「登録日本語教員の資格を取得するメリットは?」
「登録日本語教員になるための要件を知りたい」
昨今、外国人に日本語を教える職の需要は高まっています。

本記事では、登録日本語教員の概要について解説していきます。
日本語教師が国家資格へ移行することも決定しました。
不安や悩みを抱えている方は、ぜひ最後までご覧ください。

登録日本語教員とは?

登録日本語教員とは、外国人に日本語を教える「日本語教育」を行う「日本語教師」のクオリティ維持を目的とした日本語教師の国家資格の名称です。
令和4年5月31日に開催された「日本語教育の質の維持向上の仕組みに関する有識者会議(第1回)」にて新たに提言され、2023年5月26日の「日本語教育の適正かつ確実な実施を図るための日本語教育機関の認定等に関する法律」により制定されました。

国家資格になるということは、教師として求められるクオリティが向上するだけでなく、資格取得難易度の上昇も意味します。
これまでに無資格でボランティアなどで日本語を教えてきた方は、国家資格化するタイミングに合わせて、日本語教師の資格取得を検討してみるとよいでしょう。
留学生を受け入れている日本語学校などで働く場合は、登録日本語教員資格が必須になってくるため、そういった方も早めの準備が必要です。

現役教師も登録日本語教員の資格を取得しなければならないのか

既に日本語教師として活躍している方々から多く挙がる質問が「現役教師も登録日本語教員の資格を取得しなければならないのか」というものです。
2023年9月現在、日本語教師の公的な資格はなく、全て民間資格であり、また、必ず取得しなければならない資格というものもありません。
しかし、日本語学校などの多くの日本語教育機関では有資格者(注1)のみを募集しているのも事実で、実際は無資格のまま日本語教師の職に就くのは難しい現状があります。

では、登録日本語教員の資格制度が始まったら、どうなるのでしょうか。
登録日本語教員の資格制度が始まると、日本語学校では「登録日本語教員」の資格を取得した方のみが働けるようになります。
ただし、この制度は2024年4月1日から始まるため、開始したばかりの頃は、登録日本語教員の資格を持っている日本語教師は誰もいません。
そのため、法律には現職日本語教師が登録日本語教員の資格を取得するための十分な経過措置期間を設けるよう明記されており、その具体的な案を2023年9月現在、文化庁日本語教育小委員会で検討しております。

(注1)「有資格者」とは
日本語学校などの法務省告示校で働く場合に求められる資格で、法務省告示基準で定められた以下の3つのルートのうち、1つをクリアしている日本語教師のことを指します。

  1. ①日本語教師養成講座420時間カリキュラムを受講し修了する。
  2. ②日本語教育能力検定試験に合格する。
  3. ③大学または大学院において「日本語教育に関する教育課程」を主専攻(45単位)または副専攻(26単位)し、卒業する。

登録日本語教員の資格を取得するメリット

ここまで、登録日本語教員の概要について解説してきました。
ここからは、登録日本語教員の資格を取得するメリットを解説していきます。

主なメリットとしては以下の3つが挙げられます。

  • ・認定日本語教育機関で日本語教師として働ける
  • ・社会的な地位や認知度を得られる
  • ・従来の資格しか保持していない日本語教師との差別化を図れる

それぞれ解説していきます。

メリット①認定日本語教育機関で日本語教師として働ける

日本語教育に関する資格や認定を取得することは、日本語教育機関で働くにあたって大きなメリットとなります。
なかでも、認定日本語教育機関で日本語教師として働く場合であれば、登録日本語教員の国家資格取得が必須です。
認定日本語教育機関とは、文部科学大臣が日本語教育を適正かつ確実に実施するための一定の要件を満たしていると認定した日本語教育機関のことです。
これらの機関では、日本語を学ぶ外国人学習者が日本語を自分の学習目的に合わせて適切に習得できるよう、教育プログラムが実施されています。

こうした認定日本語教育機関で日本語教師として働くことのメリットは、しっかりとした教育課程をもつ機関で教えられることです。

また、認定日本語教育機関で働くことで、学習者たちの日本語学習に貢献できるという点も魅力的です。
外国人である学習者が日本で暮らすために必要な日本語力を習得することで、生活がスムーズになり、より豊かな文化交流を実現することが期待できます。

そして、登録日本語教員資格を取得し、認定日本語教育機関で働くことは、自己成長やキャリアアップにもつながります。
具体的には、自分自身が日本語教育の第一線で働くことで、教育に関するスキルや知識を磨くことができます。

以上のように、認定日本語教育機関で登録日本語教員として働くことには多くのメリットがあります。
日本語教育に興味がある方は、ぜひ登録日本語教員資格取得を目指して、自身のスキルアップと日本語学習者への貢献につなげていただきたいと思います。

メリット②社会的な地位や認知度を得られる

登録日本語教員資格の取得は、「日本語教師」という職業の社会的な地位や認知度を高めることにもつながります。
実際、登録日本語教員の資格を持つことで、日本語教育機関から信頼され、正式な雇用や良い待遇を得る可能性が高まることが予想されます。
また、言語教育の分野においては、日本語に対する需要が年々増加しています。
そのため、国家資格を持った登録日本語教員は、海外や日本国内における日本語教育機関での就職機会が多くなることも予想されます。

さらに、日本語教育においては、学習者自身だけでなく、その周りにいる企業関係者のニーズに応えられる教育を行うことが求められます。
そのため、一定の要件を満たした教師であることを意味する資格を持った登録日本語教員は、日本語教育のプロフェッショナルとしての信頼性を高めることができ、生徒学習者や企業関係者など学習者に関わる人たちからの信頼も得やすくなる可能性が高まります。

更に、国は日本語教育に関する多言語情報発信サイトを設け、そこから全世界の日本語教育を必要としている人・機関に向けて日本語教育機関や登録日本語教員情報を提供していく方針を打ち出しています。
そのため、登録日本語教員の資格を持つことで、日本国内だけでなく、国際社会での活躍の場を広げることが期待できます。

以上のように、国内の認定日本語教育機関で働くだけでなく、国際社会での活躍、更には、日本語教師という職業の社会的地位・認知度の向上など、幅広いメリットがあるため、登録日本語教員の資格取得は、大きな意義を持つことがわかります。

メリット③従来の資格しか保持していない日本語教師との差別化を図れる

登録日本語教員の資格を取得することで、従来の資格のみを保持している日本語教師との差別化を図ることができます。
従来の日本語教師の資格としては、

  1. ①日本語教師養成講座420時間カリキュラムを受講し修了する。
  2. ②日本語教育能力検定試験に合格する。
  3. ③大学または大学院において「日本語教育に関する教育課程」を主専攻(45単位)または副専攻(26単位)し、卒業する。

といった法務省告示基準で定められた3つのものがありますが、登録日本語教員の資格はこれら従来の民間資格とは別に作られた新たな国家資格として位置づけられています。

このように、登録日本語教員の資格を持つことは、従来の民間資格のみ保有している日本語教師とは異なる新たな国家資格も取得している日本語教師として差別化を図ることができます。

登録日本語教員になるための要件

ここまで、登録日本語教員の資格を取得するメリットを解説してきました。
ここからは、実際に登録日本語教員になるための要件を見ていきましょう。

登録日本語教員になるための要件は以下の2つです。

  • ・日本語教育に関する2つの試験に合格する
  • ・教育実習(実践研修)を修了する

それぞれ見ていきましょう。

要件①日本語教育に関する2つの試験に合格する

日本語教育に関する2つの試験とは、「基礎試験」と「応用試験」と呼ばれるものであり、どちらも多肢選択式の筆記試験で、どちらも2024年以降に国が新たに実施する試験のことです。
これらの試験を受けて合格することは、登録日本語教員になるための必須要件となっています。

1つ目の試験である「基礎試験」は、「日本語教育に関する必要な知識・技能を確認するもの」です。
2つ目の試験である「応用試験」は、「日本語教育に必要な知識及び技能の応用」を確認するもので、実際に日本語教育を行う際の現場対応や問題解決を行うことができる知識及び技能の応用力を測定する試験です。
どちらの試験にも2019年3月4日に文化庁の文化審議会国語分科会で示された「日本語教育人材の養成・研修の在り方について(報告)改訂版」で示された必須の教育内容が含まれており、日本語教育を行う者として必要不可欠な知識及び、技能が羅的に備わっていることを確認・評価する試験となる予定です。

要件②教育実習(実践研修)を修了する

登録日本語教員になるために要件の三つ目として、教育実習(実践研修)を修了することが挙げられます。
文部科学大臣の登録を受けた機関(登録実践研修機関)で実践研修(教育実習)を行います。
この教育実習は、実務に必要な教育実践の経験を得るためのもので、登録日本語教員資格取得後に、円滑に認定日本語教育機関で日本語教育を行うことができるようにするため、一定の教育実践の経験を求める目的で必須条件とされています。

この教育実習(実践研修)の具体的な内容は2023年9月現在、文化庁で検討中ですが、全体目標として「『日本語を教えることの基礎』に関わる知識・技能を学んだことを活かし、日本語学習者を対象とした教育実践を行うことを通して、日本語教師として必要な技能・態度を身に付け、その役割を理解する」ことが掲げられ、具体的には以下の6つの学習項目が提示されています。

  1. ①オリエンテーション
  2. ②授業見学
  3. ③授業準備
  4. ④模擬授業
  5. ⑤教壇実習
  6. ⑥振り返り

登録日本語教員の経過措置・救済措置

登録日本語教員になるための要件がわかったところで、最後に登録日本語教員の経過措置を解説して終わります。
但し、この「経過措置」については2023年9月現在も文化庁で検討中であり、今後も変更される可能性があります。
そのため、最新の情報は文化庁HPなどで確認してください。

*ルネサンス日本語学院では、これから日本語教師を目指す人向けの「国家資格化セミナー」を毎月開催しておりますので、セミナーに参加して最新情報を得ることをお勧めします。

経過措置についてはその「対象となる人」に自分が当てはまった場合において有効なものですので、注意してください。
「経過措置」の対象となる方は以下の通りです。

  1. ① 現職日本語教師の方
  2. ② 現職日本語教師以外で、法律施行前に日本教師の勉強を終えた又は、始めた方

それぞれ解説していきます。

① 現職日本語教師の方

一定の条件を満たす(*)現職日本語教師の方は、法律施行後の2024年4月1日から2029年3月31日までに、以下のルートを経れば、「登録日本語教員」の資格が取得できる案が文化庁から提示されています。

【現職日本語教師の登録日本語教員資格取得に関わる経過措置《案》】2023年9月現在

【現職日本語教師の登録日本語教員資格取得に関わる経過措置《案》】2023年9月現在の画像

一定の条件を満たす現職日本語教師が登録日本語教員資格取得場合、「実践研修(教育実習)」はどんな場合においても免除されますが、どのような内容の養成課程を修了したかや、いつの検定試験に合格しているのかなどの自分の経歴によって資格取得する際に受ける試験の種類などが変わってきます。

なお、「自分がどれに当てはまるのか」は教師が自己判断するものではなく、必要書類などを文部科学省に提出し、判断されるものですので、ご注意ください。

② 現職日本語教師以外で、法律施行前に日本教師の勉強を終えた又は、始めた方

現職日本語教師以外で、法律施行前に日本語教師の勉強を修了したかたや、今現在日本語教師の勉強をしている方の経過措置はどうなるのでしょうか。
これら方は「どのような内容の養成講座を修了したか、又は、在籍して学習中か」で経過措置対象となるか否かが決まります。
経過措置対象となるのは「必須の50項目に対応した日本語教師養成課程」を修了した又は、在籍している方です。
これらの方は、法律施行後の2024年4月1日から2033年3月31日までの間に国家資格を取得する場合において、養成課程修了後、「応用試験」を受験し合格すると、登録日本語教員となれます。

現職日本語教師以外で、法律施行前に日本教師の勉強を終えた又は、始めた方のフロー画像

登録日本語教員は日本語教師の国家資格

今回は、登録日本語教員の概要について解説してきました。
登録日本語教員は、日本語教師の国家資格です。
今後日本語学校など留学生を対象とした日本語教育を行う教育機関は登録日本語教員の配置が必須となるため採用条件に「登録日本語教員資格取得者」であることを求めますが、留学生以外の就労者や生活者、児童生徒などに日本語を教える日本語教師を募集する場合にも募集要項に「登録日本語教員資格の有無」を含めることが予想されます。
そう考えると、これから日本語教育に携わる方は自分の活躍の場を広げるためにも、取っておくべき資格といえます。

*ルネサンス日本語学院では、これから日本語教師を目指す人向けの「国家資格化セミナー」を毎月開催しております。
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