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外国人材の採用の増加に伴い、対応に悩まれる人事の方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
日本企業が国際化する中、日本語のスキルは外国人採用の重要な要素となっています。その中でも、JLPT(日本語能力試験)は外国人の日本語能力を客観的に測る試験として認知度が高く、応募条件として活用している企業が多くあります。
今回は、日本語能力試験の各レベルの目安や採用への活かし方をご紹介します。
目次
日本語能力試験、通称「JLPT」とは「Japanese Language Proficiency Test」の略で、近年、政府が指定する在留資格の条件や企業が外国人を選考する際の条件として設定されるケースが増えています。
試験は、日本語を母語としない人々の日本語能力を測定し、認定することを目的としています。毎年7月と12月に実施され、日本国内を含む世界85カ国・249都市で受験が可能です(2018年時点)。2018年時点での受験者は100万人を超え、その人気の高さが窺えます。
JLPTでは、日本語の知識だけでなく、日常的なコミュニケーション上の課題を遂行できる能力を重視しています。文字や語彙、文法の知識も大切ですが、最終的な目標は「コミュニケーション上の課題解決能力」です。そのため、試験内容は、「日本語の文字や語彙、文法についてどのぐらい知っているか」を問う「言語知識」と、その「知識を実際のコミュニケーションでどのぐらい使えるか」を測る「読解」「聴解」という、3つの要素で構成されています。
JLPTは、N1からN5までの5段階にレベル分けされています。レベルはN5が最も易しく、N1が最も高いレベルです。各レベルにはそれぞれの認定目安が設けられており、受験者は自分の日本語レベルを詳細に把握することができます。試験では尺度得点という採点方式が導入されており、毎回異なる試験内容や難易度にも関わらず、公平な得点が算出されます。これにより、受験者は自身の実力を正確に評価することができます。大規模試験のため、選択式のマークシート方式で、話したり書いたりする能力を直接測る試験科目はありません。
外国人の日本語能力を測るテストはJLPT以外にも存在します。
以下の記事ではBJTビジネス日本語能力テストについて詳しく解説しています。
興味のある方はこちらの記事も参考になさってください。
日本語能力試験は、レベルの高い順にN1からN5の5段階に分かれています。その内容と合格点・基準点について具体的にみていきましょう。
日本語能力試験のレベルの目安は、「読む」「聞く」という観点の言語行動で表されています。
N1:幅広い場面で使われる日本語を理解することができます。
幅広い話題の新聞の論説・評論など、論理的に複雑な文章だけでなく、抽象度の高い文章も理解できます。また、自然なスピードのまとまった会話、ニュース、講義なども聞き取れ、詳細を理解したり、要旨を把握したりすることができます。
N2:日常的な場面で使われる日本語の理解に加え、より幅広い場面で使われる日本語をある程度理解することができます。
幅広い話題の新聞や雑誌の記事・解説など、論旨が明快な文章が理解できます。また、日常的な日本語理解に加え、幅広いシーンで会話やニュースの内容や人間関係、要旨が理解できます。
N3:日常的な場面で使われる日本語をある程度理解することができます。
読解能力は、日常トピックだけでなく新聞見出しのような情報も把握できます。文章がやや難しい場合でも、簡単な言い換えや手がかりから理解できます。聴解能力も高く、やや自然に近い会話を聞いて理解できます。
N4:基本的な日本語を理解することができます。
日常的な内容であれば、基本的な語彙や漢字を使った文章も理解可能です。同様に、日常的な場面でややゆっくりとした会話であれば、ほとんど内容を理解できます。
N5:基本的な日本語をある程度理解することができます。
ひらがなやカタカナに加えて基本的な漢字を含む定型的な文章が読めます。また、日常生活の短い会話から必要な情報を聞き取れる程度の聴解能力も持っています。
※日本語能力試験で問われるのは「日本語の理解」であり、各レベルの認定の目安は「読む」「聞く」という言語行動で表されていることを押さえておくことが重要です。
※一般的にビジネスレベルと認識されているのはN1、ビジネス最低限レベルとされているのはN2レベルで、採用基準としてN1、N2を設けている企業が多いです。
合格するためには、総合得点180点で合格点以上をとらなければなりません。なお、合格点については、例えばN1は100点、N5は80点のように各レベルで異なりますので注意が必要です。また、区分別に基準点が設定されており、合計点数が合格点を超えていても、特定の区分で基準点を下回る場合は不合格となります。そのため、受験者は自身の弱点を把握し、それぞれの区分で最低限の得点を確保できるよう準備を行う必要があります。
次に、JLPTを取得するメリットについてお話します。
日本語能力試験(JLPT)は、世界最大規模の日本語試験であり、日本語能力の証明として広く共通認識されています。JLPTの取得は、日本語力の目安として機能し、自身の言語能力を客観的に示すことができます。
特に日本の企業への就職を考える外国人にとって、JLPTの取得は大きなメリットです。JLPTの成績は、日本語能力を具体的な結果として証明し、日本企業に自身の言語能力を示すことができます。同様に、企業側もJLPTの受験結果を通じて、日本語の能力を把握し、継続的な学習意欲を持つ候補者を見極めることができます。このように、JLPTは日本語能力を証明するための重要なツールとして、学習者や企業にとって価値のある存在となっています。
日本語能力試験(JLPT)合格者には、出入国管理上の優遇措置が与えられる制度があります。この制度では、N1の合格者には15ポイント、N2の合格者には10ポイントが与えられ、合計70ポイント以上で優遇措置が適用されます。優遇措置には、複数の在留資格の活動が許可されたり、5年の在留期間が与えられたりする特典が含まれます。
特にN1の合格は最難関であり、この認定を受けることで日本の国家試験受験資格の取得や、一部の科目の免除措置を受けることが可能です。しかし、各資格によってJLPTの取り扱いが異なるため、詳細はそれぞれの試験の公式ホームページを参照することが重要です。詳細な内容や条件については、出入国在留管理庁のWebサイトで確認することができます。JLPT合格だけでなく、日本での活動や滞在においても重要なメリットをもたらすことがわかります。
外国人社員のモチベーション向上には、JLPTの取得が有効な手段として挙げられます。JLPTの受験勉強を通じて、日本語能力を向上させることは、外国人社員にとって大きな自己成長の機会となります。日々の学習や実践を通じて、言語スキルが向上する喜びや達成感を感じることで、彼らのモチベーションが高まることでしょう。
さらに、JLPTの受験勉強は、日本語能力の向上だけでなく、自己成長やキャリアの発展にも繋がります。業務における日本語でのコミュニケーションがスムーズになれば、チーム内での円滑な業務遂行や情報共有が可能になります。また、日本語能力の向上は、業務への取り組み方や意思疎通能力の向上にも繋がり、仕事の質や効率性を高めることにつながります。
次に、JLPTで測れる日本語能力について詳しく解説します。また漢字圏、非漢字圏によるアドバンテージの違いも、ぜひ参考にしてください。
言語学の観点から見ると、言語の四つの技能として、「読む、聞く、書く、話す」の4つがあり、それぞれ受容能力と産出能力に分類されます。JLPTでは、受容能力である「読む」と「聞く」を四択(一部三択)のマークシート方式で測定しますが、「書く」と「話す」の産出能力は直接評価されません。
そのため、JLPTの合格は読解力や聴解力がある程度あることを示すものであり、実際のコミュニケーション能力や会話能力を総合的に評価するものではありません。実際には、同じレベルの合格者でも、読み書きレベルや会話レベルには個人差が大きいという特徴があります。
したがって、入社後の業務に必要な日本語能力を正しく把握したい場合は、面談や簡単な書き取りテストなどを準備しておくのもよいでしょう。企業が外国人採用者の日本語能力を判断する際には、JLPTの合格レベルに囚われすぎず、採用基準の目安として捉えておくことをお勧めします。
言語習得の過程において、「読む」と「聞く」という受容能力は一般的に早く習得される傾向があります。しかし、多くの場合、「読んで理解できるけれども書くことが難しい」「聞いて理解できるけれども話すことが苦手」といったパターンが見られます。
漢字圏の日本語学習者に関しては、特に興味深い傾向があります。彼らは漢字を理解する上でのアドバンテージを持ちます。なぜなら、多くの漢字圏の言語(中国語や韓国語など)と日本語の漢字は共通しており、漢字の意味や読み方をすぐに把握できるからです。そのため、漢字圏出身者は、日本語の読解や筆記のスキルが比較的早く発達する傾向があります。
しかし、会話能力に関しては、漢字の知識が直接的には役立ちません。言語の表現や文法、語彙の習得は、漢字の知識だけでは不十分です。そのため、漢字圏の学習者は、中級レベル以上のN1やN2になると、会話能力の向上においてより努力が必要になります。
一方で、Nレベルが高くなるにつれて漢字の使用頻度が増えるため、漢字圏の学習者はそのアドバンテージを活かして学習を進めることができます。この点で、特に中級レベル以上の試験において漢字圏出身者に有利な状況が生まれます。
漢字圏以外の学習者にとっては、漢字の知識が不足しているため、日本語の学習において苦労することがあります。彼らは漢字の意味や読み方を一から学ばなければならず、漢字がレベルアップの障害となる可能性があります。
採用時に日本語のレベルをどのぐらいに設定するか、外国人採用側としては悩ましいところです。次に、レベル設定に参考となる、JLPTと個別のポジションや在留資格との関連性を解説します。
採用において必要な日本語レベルは、そのポジションや業務内容に応じて異なります。企業が求める日本語のレベルは、その業務での日本語の使用頻度やコミュニケーションのニーズに合わせて決定されるべきです。
例えば、国内営業職や管理職など、社外の日本人のお客様とのコミュニケーションが求められるポジションでは、少なくともN1以上の日本語能力が望ましいと考えられます。一方で、社内での会議やプレゼンテーションが主な業務であれば、N2以上のレベルが必要となるでしょう。しかし、社内コミュニケーションが主体のエンジニア職や技術職においては、N3程度の日常的な会話ができれば十分であり、業務遂行に支障が生じることは少ないでしょう。また、工場のラインや外国語でのマニュアルが用意されている業務では、N4やN5程度の日本語レベルでも大きな問題はないと考えられます。
以上のように、採用における日本語レベルの適正は、その個々の業務や役割によって異なります。企業は、業務に必要な日本語のスキルを明確に定義し、そのポジションに適した日本語能力を持つ候補者を採用することが重要です。そのためには、適切な採用基準を設定し、候補者の日本語能力を評価する方法を確立することが不可欠です。
特定技能は、2019年4月にスタートした新しい在留資格です。特定技能は他の在留資格と異なり、日本語能力テストの合格が必須となっています。具体的にはJLPTのN4以上か、国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)のA2以上の合格が要件ですが、レベルとしては「基本的な日本語を理解することができる」程度で、それほど高くはありません。ちなみに介護分野の仕事に就く場合、上記の日本語能力テストに加えて「介護日本語評価試験」の合格も必須です。
「特定活動」の在留資格は、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格よりも幅広い業務(例えば、現場作業やサービス業務)に従事することができる点が特徴です。ただし、認可要件としては、日本の4年制大学(院)を卒業していること、かつ、日本語能力試験N1またはBJTビジネス日本語能力テストで480点以上という、非常に高度な日本語能力が求められています。
JLPTの要件は特にありませんが、ビジネスレベルとしてN3~N1程度の日本語力が目安となっています。
「高度専門職」ビザの申請においては、日本語能力試験に合格することで高度人材ポイントが加算されるため、在留資格の取得条件を満たしやすくなる利点があります。例を挙げると、JLPTのN1(BJTスコア480点以上)で15ポイント、N2(400点以上)で10ポイントが付与されるため、「高度専門職」の取得を目指す場合は日本語能力試験を受験してみることもお勧めです。
JLPTの要件は特にありませんが、ビジネスレベルとしてN3~N1程度の日本語力が目安となっています。
多くの就労ビザの申請に際して問われるのは、学歴要件や実務経験の年数などです。ただし、特定技能や一部の在留資格、もしくは就労を予定する企業・職種によっては、日本語能力の証明が必要となりますのでご留意ください。
JLPTを応募条件の一つとして設定することは、採用活動において有効な手段です。しかし、JLPTも含め試験の結果だけに依存して採用を決定することにはリスクも伴います。採用を成功させるために、自社の業務遂行に必要な日本語のレベルを把握し、採用基準を設けましょう。
日本語能力試験を外国人の採用に活用する際には、試験結果は参考程度に捉えるようにしましょう。なぜなら、日本語能力試験には「書く」「話す」のアウトプット力を測る問題がないためです。N1やN2に合格していても、コミュニケーション能力が高いという保証はありません。漢字が苦手で日本語能力試験では低いレベルであったとしても、会話は問題なくできる外国人もいます。日本語能力試験の結果以外にも、面接での会話も考慮して、総合的に日本語能力を判断するのをおすすめします。
日本語能力試験の結果を採用に活かす際は、自社の業務遂行のためにどの程度の日本語能力が必要かをよく考えましょう。職種によっては、日本語能力よりも専門的なスキルや能力が重視されるケースもあるでしょう。コミュニケーションが業務の中心ではない場合、N3程度でも実際の業務に影響しない場合もあります。自社にとってハイレベルな日本語能力が必要でない場合は、必ずしもN1やN2の合格者にこだわらなくともよいでしょう。
今回は、外国人採用の基準として広く活用されているJLPTについて解説しました。
日本語能力試験(JLPT)は、外国人の日本語能力を客観的に測る試験として役立つといえます。しかし、日本語能力試験の結果だけで外国人の日本語能力を判断するのは、おすすめできません。外国人の採用を検討している場合は、日本語能力試験の結果に加えて、実際にコミュニケーションをとったうえで、総合的に判断しましょう。
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