企業が日本語研修を導入する際に押さえておきたいポイントとは

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市場のグローバル化、また国内の人材不足などの影響などから、近年では外国人人材を積極的に採用する企業が多く見られるようになりました。
外国人人材を採用するにあたり、大きな課題の一つとして挙げられるのが言語スキルです。面接ではある程度コミュニケーションが取れていたものの、いざ入社してみると、自社が求める水準には至っていなかった、という場合もあります。

解決策はさまざま挙げられますが、日本語研修を行って、日本語スキルの向上や日本ならではの文化・商習慣の理解に繋げるという方法があります。社内で独自に日本語研修を行うこともできますが、学習効率という面では外部の専門家に委託したほうが、メリットが大きい場合もあります。
今回は、日本語研修を外部に委託する場合の流れや、各フェーズでの重要なポイントについて解説いたします。これから外国人人材を採用したい、あるいは外国人社員の日本語スキルを上げたいとお考えの方は、ぜひ参考にしてみてください。

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日本語研修を導入する際の各ステップとは

まずは、社内で日本語研修を導入する時の、大まかな流れについて解説いたします。今回は、大きく4つのフェーズに分けています。各ステップで行うことをまとめていますので、一つずつチェックしていきましょう。

ステップ①事前の準備

事前準備のステップは、研修実施の検討~依頼先選定前までの段階です。人材の育成などを担当している人事・総務が日本語研修を主導することが一般的ですが、意義のある研修にするためには、部署を超えた協力が必要です。

研修の実施が決まったら、内容を人事だけで決めてしまうのではなく、外国人社員が働く現場の上司とコミュニケーションを取り、日本語研修の目標・ゴール設定を行います。併せて、研修業務に支障のない時間や時期をヒアリングしておきます。

この段階で、日本語研修の対象となる外国人社員とも面談を行い、研修の意義や目的について丁寧に説明します。

具体的なビジョンが見えてきた段階で、実際に研修を行う時期や時間帯、予算について検討していきます。

ステップ②依頼先の選定

ステップ①で決定した内容をもとに、依頼先の選定作業に入ります。一口に企業向けの日本語研修機関といっても、事業者によってさまざまな特色があります。複数の研修機関で相見積もりをとっておきましょう。

日本語研修機関は、その企業にフィットしたコースデザイン・研修スタイルを提示してきます。ここで改めて、自社が求める内容であるかどうか、研修機関の実績は十分か、といった点を確認します。また、研修がどこで行われるのか、対面かオンラインかなど、実際の研修形態についてもチェックしておきましょう。

条件がマッチしていれば、いよいよ依頼先の決定、契約の締結です。社内で研修を行う場合は、この時点で適切な学習場所・環境を整えておきましょう。

ステップ③研修の実施

ここからは、研修の実施フェーズに入ります。実際の研修自体は外部機関に任せることになりますが、円滑に進められるよう、研修担当者が気にかけておきたいことがあります。

一つは、研修内容の把握です。同時に、受講している外国人社員の様子なども、研修機関と共有できるとよいでしょう。

また、研修の質を向上させるためにも、研修を担当している日本語教師、受講者と定期的にコミュニケーションをとっておくことが望ましいです。これにより、万が一課題やトラブルが生じた場合にも介入しやすくなり、スムーズな解決が図れます。

ステップ④研修後の対応

日本語研修が終わったら、効果を測るために必ず到達度チェックを行います。カリキュラムにもよりますが、多くの場合は到達度チェックも内容に含まれています。

併せて、受講者本人へ対する研修のフィードバックやアドバイスを求め、今後の学習に繋げます。研修機関によっては、企業に対してのフォローアップを受けてくれるところもありますので、日本語研修や外国人社員の雇用に関して課題感がある場合は、同時に相談するのもよいかもしれません。

日本語研修を導入する各ステップで押さえておきたいポイント

続いては、日本語研修のステップ①から④まで進めていくにあたり、各フェーズにおける重要なポイントをご紹介します。

事前の準備の際のポイント

まずは、ステップ①「事前の準備」フェーズにおけるポイントを3つご紹介します。

ポイント①:担当者を明確に決めておく

日本語研修の導入・実施に取り組む担当者を明確に決めておくことが重要です。比較的大きな規模の企業では、人事や総務部の社員がその役割を担いますが、少人数の企業ですと、適任の部署が存在しないこともあります。外国人スタッフのフォローをしているから、研修もお願いね、となんとなく任せるのではなく、役割・責任の所在を明らかにしておきましょう。これにより、日本語研修をスムーズに導入・実施することができます。

また、担当者をはっきりさせておくことは、その社員を孤立させない、という目的もあります。外国人雇用・研修に関する課題感の把握、悩みを全体で共有することで、組織が一丸となって解決を目指すことができます。

ポイント②:外国人社員に学習の目的を説明する

外国人社員には、あらかじめ研修の必要性を丁寧に説明しておきましょう。外国人社員の中には、日本語学習よりも業務に集中したい、そもそも学習の必要性を感じていないという人もいます。日本語研修の効果を高め、これまで以上に組織の戦力として活躍してもらうためにも、会社としてこのプロセスは避けられません。

研修の成果が業務に繋がる、資格試験を目標にしているなど、会社によって研修の目的はさまざまでしょう。外国人社員のモチベーションにも関わることですので、慎重かつ密なコミュニケーションが求められます。

ポイント③:助成金の申請可否を調べておく

費用の目安については後述しますが、外部委託で日本語研修を行う場合、自治体によっては助成金を受け取れることがあります。予算の検討と併せて、利用できる制度もチェックしておくとよいでしょう。

依頼先の選定の際のポイント

続いて、ステップ②「依頼先の選定」フェーズでのポイントを4つご紹介します。

ポイント①:依頼先に目的を共有する

依頼先選定のカギとなるのは、ステップ①で設定した目標です。日本語研修機関は、その企業にフィットした内容の研修を行いますので、見積もり時に研修の目的やゴールを明確に伝えましょう。

ただし、業務内容の中に、特許や知財など、会社として守るべき情報が含まれている場合は注意が必要です。伝える範囲をあらかじめ決めておくか、NDA契約を締結した上で見積もりを取るなどし、安易に情報が流出しないよう気をつけましょう。

ポイント②:依頼先の適性を調べる

研修を任せるに足る機関であるかどうかの見極めも、重要なポイントです。信頼できる日本語研修機関は、社内の担当者とのやり取りから、目的や目標を上手く吸い上げてくれます。具体的な研修内容・カリキュラムの提案、レベルチェックなども、ヒアリング内容に基づいて適切に行ってもらえるでしょう。

しかし、企業の日本語研修の適性がない機関の場合、企業側が目標とするレベルに及ばない、ちぐはぐなカリキュラムを提示してくることがあります。見積もりを取った段階で不自然さや違和感が拭いきれない場合は、実績や講師の質などを再確認しましょう。

ポイント③:契約内容を細かく決めておく

契約内容におけるポイントは、自社の権利を盛り込んでおくことです。例えば、研修内容の録音に関する規定や、研修の振替・日程変更の条件・費用、研修内容・講師の対応に満足できなかった場合の対応方法などです。事前に予想できる部分については、あらかじめ契約内容に明文化しておくことが望ましいでしょう。

ポイント④:研修前に外国人社員と面談を行う

研修が始まる直前のタイミングで、外国人社員と再度面談を行いましょう。企業・社員双方へのメリット、業務へのプラスの影響などは、最初の面談時よりも具体的に説明できるでしょう。これらを上手く伝えられれば、参加の動機づけにもなり、日本語研修の成功に繋がります。

研修の実施の際のポイント

ここでは、ステップ③「研修の実施」段階におけるポイントをご紹介します。

ポイント①:研修内容や進捗は把握しておく

研修内容の改善や見直しは、研修機関に丸投げしてしまうのではなく、自社で舵取りを行うようにします。研修が進んでいくと、実施前には予想していなかったトラブルが起こることもあります。

例としては、何らかの事情で、研修スケジュールを大幅に変更しなければならないなどの環境的な問題のほか、内容が簡単すぎる人とついていけない人が出てくるといった、受講者のスキル差による課題などが考えられます。

研修の実施後の際のポイント

最後に、ステップ④「研修の実施後」フェーズにおけるポイントをみていきましょう。

ポイント①:必ず依頼先と効果測定を行う

先述したように、企業の日本語研修において、その効果を見極めるための到達度チェックはほぼ必須と言えます。しかしながら、企業向けの日本語研修の実績が少ない依頼先の場合、到達度チェック自体がスタンダードではない場合があります。認識の齟齬を防ぐためにも、到達度チェック実施希望の旨を、あらかじめ依頼先と共有しておきましょう。

ポイント②:受講者へのフィードバックを行う

受講者本人へのフィードバックは、可能な限り具体的に、専門的なアドバイスを受けるようにしましょう。語学は、研修が終わった段階で全てをマスターできるものではなく、その後も地道な学習が続いていきます。受講者それぞれの課題や、それを克服するための学習方法などを提示してもらいます。

日本語研修にかかる費用相場

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最後に、日本語研修を外部に依頼する場合の費用相場についてご紹介いたします。日本語研修は、それぞれの研修機関が独自に金額を設定していますので、費用もまちまちです。あくまで一つの目安として参考になさってください。

どの研修機関にも共通して言えるのは、派遣する日本語教師の人件費、カリキュラムの策定、教材選定のコスト、研修実施中の管理コストなどがかかっているということです。これらを踏まえると、1時間あたり4,000~10,000円程度が目安になります。公的機関のほうが比較的リーズナブルで、民間は比較的高額な傾向にあります。

また、受講する外国人社員の人数や、クラス編成によっても費用は変動します。ただし、研修機関によっては「○人まで同額」といった金額設定を行っているところもありますので、見積もりを取った際にきちんと確認しておくことが大切です。
最終的に、研修費用の総額は「1時間あたりの金額×総時間」で決まります。総額のみを提示された場合は、内訳を見せてもらってもよいでしょう。不必要な部分は削ってもらうのも一つの方法です。

綿密なコミュニケーションと選定先の見極めが成功のカギ

企業の日本語研修を外部委託するにあたっての流れや、重要なポイントを解説いたしましたが、参考にしていただけましたでしょうか。

官民問わず、日本語研修機関の数は非常に多くありますが、選定のコツやポイントを押さえておくことで、自社にマッチした研修機関を見つけることができます。

また、日本語研修を成功に導くためには、社内での情報共有や、研修を受講する外国人社員本人、現場の上司との密接なコミュニケーションも重要です。以降の語学習得や、組織全体の働きやすさにも関わってきますので、都度状況把握をしておくことが大切です。

プロの専門機関だからと任せがちになってしまうことが多いですが、自社でしっかりと手綱を握り、主体的に研修に関わっていきましょう。

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