外国人社員のコミュニケーション能力を測る日本語能力試験とは

22326189_s.jpg
外国人の日本語におけるコミュニケーション能力を図る指標の一つに「日本語能力試験」があります。
グローバル化が進む中、とくに外国人を採用している企業の採用担当者の中には、面接だけでは相手の日本語能力の判断が難しく、頭を悩ませている方も少なくないでしょう。
そんな時には、日本語能力試験のレベルを目安にするといいかもしれません。
今回は、日本語能力試験の概要やレベルごとの日本語能力、日本語能力試験の有効性などについて解説します。

関連記事:外国人社員が在籍する企業必見!BJTビジネス日本語能力テストとは
関連記事:日本語能力の資格は何がある? それぞれの特徴と取得の理由を解説


日本語能力試験とはどんな試験?

日本語能力試験とは「JLPT(Japanese-Language Proficiency Test)」とも呼ばれる、日本語能力を図るためのテストです。

日本語を母国語としない外国人のために作られたテストで、独立行政法人「国際交流基金」と公益財団法人「日本国際教育支援協会」によって運営されています。

1984年に開始された当初、受験者は7,000人ほどでしたが、2011年には約61万人が受験したという世界最大規模の日本語能力検定です。

現在では日本国内だけでなく、世界で87の国や地域で実施され、日本語能力試験に合格することで学校での卒業資格認定や、企業での優遇措置が受けられる仕組みとなっています。

外国人の日本語能力を測るテストはJLPT以外にも存在します。
以下の記事ではBJTビジネス日本語能力テストについて詳しく解説しています。
興味のある方はこちらの記事も参考になさってください。
関連記事「外国人社員が在籍する企業必見!BJTビジネス日本語能力テストとは

日本語能力試験のレベルと認定の目安

日本語能力試験は、レベルの高い順にN1〜N5の5段階に分類されます。

それぞれの内容と認定の目安について、具体的に見ていきましょう。

N1

日本語能力試験の最高位となるN1は非常に難易度が高く、幅広いシーンで日本語を理解する能力が求められます。

最低限覚えておかなければならない漢字は2,000文字、単語は1万個と言われ、通訳として難なく日本語を使いこなせるレベルです。

新聞の論説や評論を読み解く読解力、ニュースや講義を聞いて、時に日本人でも難しいと感じる内容を把握できる理解力を持ち合わせていなければ合格はできません。

N2

N2は、日常的なコミュニケーションに加え、ビジネスシーンにおいても、通常業務であれば問題なくこなせるレベルです。

新聞や雑誌を読んで内容を理解するだけでなく、ディスカッションの中で、話の流れや内容を把握する能力が求められ、漢字1,000文字、単語6,000個程度は覚える必要があります。

N3

N3に合格していれば、日本人との日常的なコミュニケーションがとれるレベルです。

分かりやすく表現することで、大体の話の流れや内容が理解できます。

ただし、抽象的な言い回しやスピードの早いやりとりは難しいでしょう。

N4

N4は、基本的な日本語は理解できるレベルとされていますが、自然なスピードでのコミュニケーションは難しいことが多く、また読み書きに関しては平仮名とカタカナが中心となります。

漢字は小学校低学年相当となるため、マニュアルなどの解読は困難です。

N5

N5合格者は、基本的に読み書きは難しく、挨拶程度は可能と考えておくといいでしょう。

よく使う言い回しであれば理解できますが、国内で仕事に就くのは難しいレベルです。

業界・業種ごとに必要な日本語能力試験のレベルの指標

N1合格者は、国内における大体の職業に就くことが可能です。

国家資格については、日本の国家試験に合格する必要がありますが、医師や看護師をはじめとする医療職や救命救急士、臨床工学技士などは、それに加えてN1の取得が必須条件とされています。

N2レベルは、専門用語を使いこなす業務は難しいかもしれませんが、一般的にN2以上を採用基準としている企業が多く、ビジネスシーンでも十分な能力を有しています。

N3を取得していれば、コンビニや飲食サービスに無理なく従事できるレベルです。

ただし、クレーム対応など急な場面では対応が難しいため、周りのフォロー体制を整えておくと安心です。

N4レベルでは、選べる業種の幅がかなり狭くなりますが、検品など単純作業であれば行えるため、工場のラインワーカーなどに向いています。

ただし、入社当初の細かい指示を理解するのは難しいため、採用側にコミュニケーションがとれる人材を確保する必要があります。

外国人社員に日本語能力試験は受けさせた方が良い?

結論から言うと、外国人を採用している場合は、積極的に日本語能力試験を受けさせた方がいいと言えます。

もちろん日本語能力試験で、相手の日本語能力が全て把握できるわけではありません。

しかし、日本語能力試験の結果から、それぞれの社員に現在どれくらいの日本語能力があるのかを、こちらが理解する大切な指標となります。

ただし、たとえN1を取得していても喋りが堪能でない人もいますし、反対にコミュニケーション能力が高いのに日本語能力試験を受験していない人もいます。

そのため、日本語能力試験の結果だけを評価せず、総合的に判断することが大切です。

外国人社員に日本語能力試験を受けさせるメリット

ここでは、雇用している外国人社員に日本語能力試験を受けさせるメリットについてご紹介します。

メリット① 能力を把握しやすい

先にも述べましたが、日本語能力試験を受けさせることで、その社員の現在の日本語能力を図る指標の一つになります。

外国人社員の日本語能力次第で、配属する部署やポストも変わってくるでしょう。

もちろん、日本語能力だけでなく実際のビジネス能力が重要ですが、双方を加味して考える際にも、試験の結果があると評価しやすくなります。

メリット② 人間関係のトラブルが減る

社内では、上司と部下、同僚などいずれの関係においてもスムーズなコミュニケーションが取れることが大前提です。

しかし、一緒に働く社員が日本語を理解できないとなると、本来は起こらないトラブルも生じかねません。

日本語能力試験を受けさせて、外国人社員が自身の能力を知ること、さらなる向上心を持たせること、周囲も理解を示すことで不要なトラブルが減らせます。

メリット③ 多様な仕事を任せられる

日本語が理解できない状態では、単純作業や決まった仕事しか任せることができず、外国人社員の士気も下がってしまいがちです。

しかし、日本語能力試験を積極的に受けさせることで向上心が生まれ、徐々に能力が高まります。

日本語能力がN3に到達すれば、基本的には接客ができるようになり、さらに上達すれば社外の相手とコミュニケーションを取るような仕事も可能になり、依頼できる仕事の幅も広がるでしょう。

日本語能力試験で合格を取るには

25124721_s.jpg

日本語を母国語に持たない外国人が日本語能力試験、それもビジネスで使えるような上級レベルに合格するのは、簡単なことではありません。

まして昼間仕事をしながら独学で勉強するのは、ほとんど不可能と言えるでしょう。

そんな中、雇用している外国人社員の日本語能力を向上させたいという場合には、企業向けの日本語研修が最適です。

もちろん日本語能力試験の合格に向けて、文字や語彙の学習をサポートしてくれる内容ですが、それ以外にも「聞く」「話す」といったコミュニケーションに必須となる技術をバランスよく学べるカリキュラムが組まれています。

また、勤務時間中に研修が行われるのも特徴です。

社員それぞれの目標や時間に合わせた受講はもちろん、時間外のフォローアップ体制も充実しているため、より効率的に合格への道を辿らせることが可能です。

費用は発生しますが、外国人社員全員の能力アップを目指す企業にとっては、最善の近道と言えるでしょう。


関連記事:【人事必見】日本語を外国人社員に学習させる方法とは
関連記事:外国人社員にビジネス日本語研修で押さえておきたい教え方のコツ
関連記事:日本語の文法を外国人労働者へ効果的に教える方法
関連記事:【外国人教育担当必見】日本語の会話力を向上させる練習方法
関連記事:外国人のリスニング力向上に効果的な日本語の聞き取り練習法
関連記事:日本語教育でメールの書き方を教える際に押さえておきたいポイント


外国人社員の日本語能力が上がれば企業の質も向上する

いかがでしたでしょうか。

この記事を読んでいただくことで、日本語能力試験の概要やレベルごとの日本語能力の違い、合格のコツなどについてご理解いただけたと思います。

外国人社員に日本語能力試験を受けさせることで、個々の日本語能力が上がるだけでなく、企業としての効率アップにもつながります。

企業向けの日本語研修を活用して、外国人社員の質を向上させましょう。


ルネサンス日本語学院では、法人様向けに日本語オンライン研修を行っています。
外国人社員の日本語教育でお困りの方は、ぜひ弊社にお声がけください。


外国人社員への日本語教育サービスをお探しの方は以下の記事もご覧ください。

関連記事:外国人のコミュニケーション力向上?日本語学習サービスとは
関連記事:外国人社員に受けさせたいオンライン日本語学習とは
関連記事:企業が日本語研修を導入する際に押さえておきたいポイントとは